【短編】保健室の常連客

「やばっ、ごめん桧村さん! 早く行こう!」

「っ……うんっ」



ベッドから下りた彼に腕を掴まれて、急いで保健室を後にする。

っひ、広川くんが、私の腕を……っ!


生徒や先生の視線を浴びながら、猛ダッシュで教室に戻った。







「んーっ、終わったーっ」



放課後の誰もいない保健室で、ぐーっと体を伸ばす。

よし、あとはこれを先生に出しておしまい。早く終わって良かった。


完成した保健だよりを持って、席を立とうとしたその時。



「あ、いたいた。桧村さーん」



ドアが開いて、広川くんが入ってきた。



「どうしたの? まさか、夕寝しに?」

「いやいや。その、今日は色々と迷惑かけちゃって……ごめんね」



眉尻を下げて謝ってきた。


迷惑って……昼休みのこと? 全然そんなことないのに。

腕を掴まれたのは驚いたけど、入る直前で離してくれたし。
というか、私の足じゃ授業に間に合ってなかっただろうから、逆に感謝している。
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