【短編】保健室の常連客
「やばっ、ごめん桧村さん! 早く行こう!」
「っ……うんっ」
ベッドから下りた彼に腕を掴まれて、急いで保健室を後にする。
っひ、広川くんが、私の腕を……っ!
生徒や先生の視線を浴びながら、猛ダッシュで教室に戻った。
◇
「んーっ、終わったーっ」
放課後の誰もいない保健室で、ぐーっと体を伸ばす。
よし、あとはこれを先生に出しておしまい。早く終わって良かった。
完成した保健だよりを持って、席を立とうとしたその時。
「あ、いたいた。桧村さーん」
ドアが開いて、広川くんが入ってきた。
「どうしたの? まさか、夕寝しに?」
「いやいや。その、今日は色々と迷惑かけちゃって……ごめんね」
眉尻を下げて謝ってきた。
迷惑って……昼休みのこと? 全然そんなことないのに。
腕を掴まれたのは驚いたけど、入る直前で離してくれたし。
というか、私の足じゃ授業に間に合ってなかっただろうから、逆に感謝している。