【短編】保健室の常連客
「それで、お詫びといってはあれだけど……」
すると、彼のスクールバッグから缶ジュースが出てきた。
それには、英語でサイダーと書かれている。
「他のやつ売り切れてて……炭酸飲める?」
「うん、大丈夫。飲めるよ」
「良かったぁ」
ホッとして緩んだ顔。
わざわざ買ってきてくれたんだ。優しいなぁ。
「ありがとう」とお礼を言って、受け取ろうとした瞬間。
「ひゃあ!」
「アハハハ! 引っかかった〜」
ケラケラ笑う彼を睨む。
キンキンに冷えた缶を首に当ててくるなんて……っ。
「もう! ビックリさせないでよ!」
「ごめんごめん」
謝っているものの、表情がふにゃふにゃしていて、全く誠意が感じられない。
はぁ……本当、広川くんのふいうちは心臓に悪い。
夏だからいいかなと思ったのかもしれないけど、ドキドキしちゃうからやめてほしい。