【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
イタズラな巡り合わせ
記憶がない。
──ん……あれ?昨日ってどうやって帰ってきたっけ。
確か結婚式が終わってから麻希の神社に寄って一緒にお酒を飲んだのは覚えてる……けど、その後の記憶がない。それに頭が痛い。完全に二日酔いだ。
朝起きたら自分のベッドで昨日の服のまま。どうやらなんとか自力で帰ってきてはいたらしい。
「んなわけね─だろ!誰がここまでおぶってきたと思ってるんだよ。いい歳なんだから自分の酒の適用量考えろよな」
シャワーを浴びてリビングのソファーに腰かけた途端、直ぐ様功太に私の思考を全力で否定された。
「もしかして功太が迎えにきてくれた?」
「俺だって友達と飲んでたのにさ。途中、麻希さんから電話があって、"身内ならこの酔っぱらいをどうにかしろ" って言われたら行くしかね─だろ」
私は急に肩身が狭くなった。
あぁ─……穴があったら入りたい。
「ご迷惑をおかけしました」
私が自分の不甲斐なさに落ち込んでいると、功太が淹れたての珈琲を持ってきてくれた。
こんなこと言っているけど、功太は姉想いで私にはもったいないぐらい良くできた弟だ。家事は完璧だし仕事も順調。
功太。あんた絶対良いお嫁さんになるよ─。お姉ちゃんは鼻がたかいよ。
拝みたいぐらい功太に感謝していると、功太も自分用の珈琲を持ってきて私の前に座りだした。
「俺も姉ちゃんに話さなきゃいけないことがあるんだけど」
功太は真剣な顔をしてそう切り出した。
……な、何。嘘。もしかして本当にお嫁に行くとかって話じゃ?!
「昨日は姉ちゃん、朝早く出かけちゃうし夜は泥酔だしで話せなかったんだけど。俺、金曜に辞令が出て海外に転勤になった」
「…………転勤?」
「うん」
「…………海外?」
「そう。アメリカに転勤」
思っていた内容と違っていたから少しビックリしてなかなか頭が理解してくれない。昨日の酔いがまだ覚めていないのもあるけど。
「そんで。二年ぐらいあっちに行くと思うから、一旦このアパート引き払おうかと思って。二人用の広さだから姉ちゃんが払える家賃じゃないし」
へ。ちょっと待って。私の今のバイト代じゃ一人暮らし用のアパートでも無理なんですけど!
「功太……待って。ちょっと落ち着こう」
「俺は落ち着いてるけど」
もっともだ。動揺しているのは私だって。
「とりあえず二週間後には経つ予定だから、姉ちゃんもそれまでに部屋決めといて。……ってまさか、単身アパートに入る貯金もないなんて言わないよな?」
「ん、んな訳ないでしょ!お姉ちゃんだって少しは貯めてるし。大丈夫!」
……ってどの口が言ってるんだよ─。
とにかくこれからのことを考えなくては、私ホームレスになってしまう?