【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
「ゲホッゴホッ!……へ、な、なんですか急に!」
思ってもみない言葉が小笠原さんから飛び出たもんだから、ついむせ混んでしまった。
"ブッ─ブッ─……"
その時突然、小笠原さんのスマホが鳴った。
同時にものすごい勢いでスマホの画面に注視。そして、ハァ─と落胆したような面持ちでまたスマホをテーブルに置く。
──ん?なんなんだ?
「あ、勘違いしないでください。ただの同居です。二ヶ月半だけの」
いやいや、勘違いなんてしませんけど。ただ意味がわからないだけなんですけど!
「小笠原さん。私、さっきからいろんな事がありすぎて、頭の処理能力がもうオーバーしていて。まずはわかるように説明からお願いします」
「あ、そうですね。……さっき、兄が言っていた原出版。今までも何度かうちの会社を嗅ぎ回ってはガセネタを出していたんです。まぁ、うちはクリーン企業なのでそんなガセネタ、すぐに話題も消えますけどね」
「はぁ。」
「でも。これがガセでなくなったらちょっと厄介なんです。……僕が花嫁に逃げられ仮でも違う人を身代わりに結婚したとなると話題の的となってしまう。たぶんしつこいあいつなら、結婚のことや片桐さんのことも嗅ぎ付けているだろうし……それにもうすぐ創立記念なので今はこのこと伏せておきたいんです」
確かに原出版の噂は聞いたことあるだけに、創業者の孫の結婚が嘘だとばれたら騒がれるのは私でもわかる。
──ん。あいつ?
「なので今、結婚式を挙げた片桐さんと別々に住んでるのはおかしいわけで。せめて、パーティーが終わるまで同居して不自然さをなくせればと。……ちょうど片桐さんも家を探しているようだし」
──あ。小笠原さんの片桐って言うの久しぶりに聞いた……じゃなくて、そういうことね。
やっと私の頭が追いついてきた。そりゃ私だって責任感じてます。でも、ん─やっぱり小笠原さんと一緒に住むのは。
私が渋い顔をしていると小笠原さんは更に言い寄ってきた。
「嫁役をやってくれるのであれば、家賃や食費など生活費は僕が全て持ちますし、しばらくの一人暮らし用の家賃代も出します。それに同居が終わった後、僕の至らなさで離婚って形にしてもらって構わないです。片桐さんは漫画だけ描いてくれたらいいですから」
漫画だけ?!
私は渋い顔から一気に目を輝かせた。なんという天から降って湧いてきたような話。