【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?

「私、やります!元はと言えば私のお節介がいけなかったですし責任もあるので、是非やらせてください!あ、でも、あの─……」

「なんです?言ってください」

「あの。これは私のというか家族間の習慣でして……その、一つだけお願い事をしてもいいですか?」

小笠原さんは少し身構えた感じになった。たぶん変な要求ではないかと思っているのだろう。

「用事とかない限りは一緒に朝食を食べてくれませんか?」
小笠原さんは拍子抜けしたような顔をして目を丸くさせている。

「朝食……ですか」

「はい!うちのばあちゃんの家訓で、何かある時以外は必ず朝食を一緒に食べることになっていたので。あ─……こういうのウザイですか?」

変な条件を言っちゃったかと少し後悔していた時、小笠原さんがクスッと顔が緩んでいったのだ。

私は少しの間、その笑顔に見とれてしまった。
──小笠原さんでもこんな緩んだ笑顔するんだ。

「いいですよ。編集者も朝は結構ゆっくりなので。ではしばらくの間、宜しくお願いします」
そう言われて我に帰った私は、急に見とれていた自分が恥ずかしくなった。

「こ、こちらこそお世話になります。あ─、で、でも良かったですよね。他の社員さんで私の本名を知っている人がいなくて。小笠原さんも今までペンネームで呼んでくれてた……し……」

あれ?やだ。何で今まで忘れていたのだろう。私の頭の中には山田さんの姿が急に浮かんできた。

ヤバッ……山田さんは私の本名知ってるじゃん!絶対おかしいと思ってたよね。どうしよう、何て言おう。

そしてその時を見計らったかのように私のラインが鳴り出した。
山田さんからだった。私は小笠原さんに山田さんのライン画面を見せた。

「小笠原さん、どうしましょう!山田さんが説明求めてます。すみませんが山田さんにだけは本当のこと話しても大丈夫ですか?」

「うん。仕方ないです。山田は元担当者だから片桐さんの名前知ってますしね……じゃあ、仕事もあるのでそろそろ僕達も出ましょうか」

私達が席を立とうとした時、今度は小笠原さんのスマホが鳴った。と同時にまたすごい勢いでスマホの画面を注視した。ハァ─とまた溜め息をついている。

──???

小笠原さんがお会計をしているとマスターが突然話しかけてきた。
「あぁ、小笠原さん。土曜日はごめんね。あれから香菜ちゃんと連絡とれた?」

「いえ、まだ」

「俺も香菜ちゃんに連絡してみたんだけどやっぱり通じなくてね。また連絡してみるよ」

「すみません。ありがとうございます」

あ─、そっか。ずっと香菜さんを探してるんだ。あぁそれで……きっとさっきの着信も香菜さんからだと思って。

──香菜さんは小笠原さんにこんなに愛されていたのに、なんで逃げちゃったんだろう?

香菜さんが戻ってくれば全て解決なのに。
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