【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
「……ん?」
あれ、出てこない。ここで合ってるよね。
私はもう一度チャイムを鳴らした。
「は─い、ちょっと待って─」
そう言われてから5分ほど待っただろうか。やっと小笠原さんがドアを開けてくれた、と同時に私は深々とお辞儀。
「おはようございます!今日からしばらくよろしくお願いします」
生活費をすべて小笠原さんが持ってくれるのだ。こんな有りがたいことはない。
私はある意味割り切って、これはシェアハウスだと思うことにした。一通り挨拶し終わった私が顔をあげると。
あれ……小笠原さん?と自分の目を疑った。
「あ─。そうか、今日からだったか。おはよう片桐さん」
ん─と。やっぱり小笠原さんか。
でもいつもビシッとしている小笠原さんとはかなりかけ離れていたからビックリ。
髪はボサボサで無精髭を生やし、よれよれのスウェット。頭を掻きながら大あくびをしている。
「じゃあ入って。部屋、案内するから」
「は、はい!」
そしていつの間にかタメ語だし。
そう思いながら玄関に入った途端、私は眉間にシワを寄せ鼻を摘まむ。また自分の目を疑った。
臭い!なんかこの部屋匂うし、あちこちゴミ溜まりで散らかり放題。
──……え、なに。小笠原さんって家ではこんな感じなの?!会社とのギャップありすぎでしょ。
う─。でもこの部屋、ハッキリ言って私には……
「実は昨日、徹夜で仕事しててさっき起きたばかりなんだ。あ、こっち使ってない部屋だから片桐さんの部屋としてつか……」
「……れない」
「え?」
「耐えられません!何なんですかこの部屋!汚いし臭いし。私、服とか身なりは確かに無頓着かもしれませんが、部屋が汚いのだけは許せないんです!」
私のすごい剣幕に小笠原さんの動きが止まってしまった。
──あんなに人のこと匂うとか言っておいて自分はどうなのさ。私生活だらしなさ過ぎでしょ。
「一先ず、掃除をさせてください!それから朝ごはんの材料を買ってきたのでキッチン使ってもいいですか?」
「あ……うん」
とりあえずこの汚部屋をどうにかしなきゃこんな所には住めない。私は腕まくりをして窓を開け、大掃除に取り掛かる。
その時、棚の上に不自然に伏せてある写真立てが気になったが、今は早くこの状況を打破することが最優先となった。