【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
「は─い。あら。あらあらまぁまぁ。拓実じゃない。香菜さんのことが気になって駆けつけてきたのかしら」
おばあさんが外の門を開けるスイッチを押すと、一分ぐらいの速さで小笠原さんが呼吸を荒くして入ってきた。
「ゲホッ。……ハァ─、ハァ─。優木さん……。大丈夫ですか?」
「あらやだ。まるで私がいじめてるみたいな言い方じゃない。私は香菜さんと一緒にお茶を飲みたかっただけよ。拓実もほら座って。今お茶入れるから」
おばあさんはそう言ってまたキッチンへお茶を入れに行く。それを確認しながら小笠原さんは私の横に座りだして言った。
「片桐さん。あなたはなぜ無計画に動くの?まだ何も話し合ってないのにバレたらどうするんだ。コホッ……今日だって別に断ることぐらいできたでしょ?」
「そんなこと言ったって小笠原さんとは全く連絡つかないし、おばあさんはすぐ電話切っちゃうしで私だって困ってたんです!」
私は "全く" を強調して言ってみせた。
小笠原さんだってこんな状況なんだから、何かあった時にすぐ連絡取れるぐらいしておいてよ。
「俺だって会議だったんだから仕方ないでしょ。これでも急いで駆けつけたん……」
小笠原さんがそこまで言いかけた時、おばあさんがさっきの途中の会話を思い出したように聞いてきた。
「そういえば二人共。さっき香菜さんに聞きそびれちゃったんだけど、出逢いはどこなのかしら?」
これ、さっきの質問だよ。おばあさんかなり気になっている様子。
私は小笠原さんの方に顔を向けて“しゅっぱんしゃ”と口パクをした。小笠原さんは何かを感じ取ってくれたのか、小さく頷いて。
「出版社で……」
「紹介で……」
違うし!
私と小笠原さんはお互い、違うじゃないかという目で睨み合った。
「あら。どっちなのかしら?」
「あ、あの。出版社です!漫画家の私の担当がたまたま小笠原さんで、そこからこう、なんというか、こうなりまして」
「そうそう。そうなんです!たまたま僕が優木さんの担当にならりまして」
私はつい吹き出すように笑ってしまった。あの小笠原さんが噛んだと思うと笑いが耐えられなかった。