【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?

──小笠原さんがデビューの時の話なんか言うから、思い出しちゃったじゃない

そう。結局、大賞を取ったのはあの時だけでそれからは鳴かず飛ばず。
それでも私が頑張ってこられたのは、あの時選んでくれた編集者の言葉……

『お話が進むに連れてキャラクターの心情の変化を上手く捉え、細かく表現されていると思います。ここからがプロの漫画家としての一歩。優木先生の実力をこれからもどんどんと発揮してもらいたいです。いつも陰ながら応援しています』

今でも忘れられない。私がずっと励まされている言葉だ。

なのに現実は……今でもまだバイト生活だし功太には金銭面を全てカバーしてもらっちゃってるし。
ダメダメな姉でごめんよ、功太。

私が更に落ち込んでいると、後ろから「はるちゃん!」と呼ぶ声が聞こえた。

「あれ、山田さん。どうしたんですか」

「さっき、はるちゃん。かなり小笠原さんにやられちゃってたから落ち込んでいるんじゃないかと思って。ちょうどランチ時だし一緒にどう?俺おごるよ」
おごるよ、おごるよ、おごるよょょ……

脳内で神・山田さんの言葉が鳴り響き、つい笑顔がこぼれたが、すぐに自分の格好を見て戸惑った。

だって今の私……ヨレヨレのパーカーだし、一本で縛っただけのボサボサ髪だし、おまけにお風呂に入っていないし、女子力をどこに捨ててきたっていう格好だ……確かに小笠原さんの言うとおり酷い身なり。

「あの、行きたいのは山々なんですが。山田さん、こんな格好で一緒にいるの恥ずかしくないですか?」

「全然平気だよ!俺は編集者として漫画家さんの事情はよくわかってるつもりだし。それに俺がはるちゃんと一緒にいたかっ(ゴニョゴニョ……)」

「ぜひ!ご一緒させてください」

ああ、なんてイイ人。
さっきまでの小笠原さんの暴言が浄化されていく感じだ。
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