【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?


「あ。それより今日、一緒に食器を見に行かない?一人暮らしであまり食器も揃っていなかったから。それに熱も下がってスッキリしたし」

「あ……ごめんなさい。今日はこれからバイトで。その後は親友の麻希と山田さんとで飲みに行くことになっているんです」

小笠原さんからの初めてのお誘い!

すっごい嬉しいんだけど、正直今は小笠原さんと一緒にいるのがちょっと辛い。どうしていいかわからなくなって身動きがとれなくなる。

「そっかぁ。だから今日は外行きの格好をしてたのか。あ─……でも山田とそんなに仲が良いとは知らなかった」

「ええ。仲が良いというか、山田さんには色々お世話になったので。結構前からたまに三人で飲みに行ってるんですよ─」

「ふ─ん……そうなんだ」

食べ終わった食器を片していた私は、バイトの時間が迫ってきていることに気づき、急いで身支度をし始めた。

「小笠原さん。熱が下がったとは言えまだ本調子ではないかもしれないので、今日は大人しくまだ寝ていてくださいね!じゃあ、私そろそろ行ってきます」

「うん。気をつけて行ってらっしゃい」

ハフゥ──……なんか照れる─!
今日の小笠原さん、すごく笑顔多いんですけど。見送られたのも初めてなんですけどぉ。

私はマンションを出てからすぐに、スマホで『不毛な恋』というワードを検索する。不毛な恋とは思いが実らない、すなわち『両思いになれない』……

私はハァ─と深い溜め息を一つつきながら調べなきゃ良かったと後悔した。わかってはいたものの改めて理由を知ると重い気持ちになるものだ。

──いつ香菜さんが戻ってくるかもわからないし……この想いは絶対に知られちゃダメだ。小笠原さんへの想いが溢れないようにしなければ。

私は気分を立て直す為に自分の頬を軽く叩いた。
< 41 / 95 >

この作品をシェア

pagetop