【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
嫉妬?(拓実version)
その日一日、片桐さんが家を出てからなんだか落ち着かなかった。落ち着かない理由が自分でもわからない。
もしかしたら久しぶりに会社を休んだからかもしれない。いざ休むとなると何をしていいかわからないものだ。
──それにしても、片桐さんが山田と飲みに行くほど仲がいいとは知らなかった。もしかして付き合っているとか?
この言葉を思い浮かべたのは今日で5回目だということに俺は気づいていない。
ふと時計を見ると夜中の0時を回ろうとしている。
「もうこんな時間。……片桐さん、遅くないか?」
いつの間にかイライラしている自分がいる。変な気分だ。
片桐さんに電話をしてみようか?……いや子供じゃないんだしそれもウザイか?ん─でも何かあったら……。電話一本かけるだけで何をこんなに迷っているのか。電話がかかってきたのは、ちょうどそんな時だった。
急いでスマホを手に取った俺は、咄嗟に片桐さんを思い浮かべたことに一瞬戸惑う。
──いつもなら香菜を一番先に思い浮かべるのに……
電話からは片桐さんを迎えにきてほしいとの内容。“あの人はいつも飲み過ぎるんだ”大きな溜め息をついて「今、迎えに行きます」とだけ伝え急いでその居酒屋へ向かった。
居酒屋に着くと一番最初に山田と目が合って、なぜだか急に腹立たしくなってきた。そして更に山田の言葉に対してなぜあんな不機嫌な物言いをしたのか……
「あの!やっぱり俺がはるちゃん運びます!小笠原さんもまだ病み上がりだしその方が……」
「いや大丈夫だ。俺が運ぶよ。どうせ帰る先は同じだから」
──はぁ。大人げなかった。山田には明日謝ろう。
「おがしゃわらしゃんの背中あったかいれすね─!」
今日一日の自分を振り返っていた時、片桐さんが俺の首を抱き締め、背中に強く顔を埋めてきたのだ。
「片桐さん。飲み過ぎだ」
「全然れすよ─!まだまだいけますよ─。わらし、強いんれすから」
呂律の回らない片桐さんの言葉につい吹き出し笑ってしまった。
──片桐さんは無鉄砲で考え無しに行動するから、こっちがいつも振り回されてばかりだ。
「片桐さん」
「はぃぃ─。なんれすか─?」
「明日からしばらく禁酒だよ」
そう告げると片桐さんは半分夢の中に浸かりながら俺の背中でしばらく絶叫していた。