【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
山田 一樹(28)は出版社QED漫画部門の編集者。あの小笠原さんの後輩となるわけだ。
私にとっては一番始めの編集担当者さん。
とても優しく長身で笑顔が似合ってスポーツマン、いつも何かと気にかけてくれる……そう、あの小笠原さんとは正反対のタイプと言えば良いだろうか。
そして私の恩人さんでもある。
私と山田さんが行き着いた場所はとてもお洒落なカフェ。
私達は窓際にある二人席に案内されたけど、なんだか落ち着かない。
辺りを見回すとカップルだらけのような、っていうか私この格好浮いてない?!山田さん、なぜ今日に限ってこのようなお洒落な場所?
「な、なんかお洒落なところですね」
「でしょ!最近出来たばかりだったから、はるちゃんと一緒に来てみたかったんだよね─。はるちゃん好きでしょ、こういうカフェ」
いやいや、まぁ好きですけども。もっとちゃんとした格好の時に来たかったです、山田さん。……とは言えない。
「そうなんですよ─。ありがとうございます」
定員さんに"スパゲッティ大盛とドリンク・ケーキ"、"サンドイッチとドリンク"それぞれのセットを頼んだ後、山田さんが笑顔で話してきた。
「はるちゃんさ、まだ体当たり取材とかやってたりする?」
体当たり取材とは、漫画を描く上で私が大事にしている取材方法。
その時の主人公の気持ちなどを感じ取る為、出来るだけ自分でいろんな事を体験してみようと思っている。
「やってますよ─。今は"結婚"がテーマの漫画なので、それに関連する取材は。でも独身なのでなかなか結婚する時の情景がよくわからなくて」
「うん。小笠原さんから結婚がテーマっていうのは聞いてたからさ、もしかしたらこのバイト、為になるかなと思って」
「バイト?」
「俺の知り合いがね、ウェディングプランナーをやってるんだけど。ちょうど模擬挙式の花嫁役バイトを探してるみたいで。突然なんだけど来週の土曜日、はるちゃんやってみない?」
──花嫁バイト?……そんなバイトがあるなんて知らなかった。