【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
原 祐二の誘い
土曜日。今日は朝から気持ちのよい快晴!
私はバイト休みだし漫画の進みも好調。小笠原さんも漫画雑誌が無事に発売されて久しぶりのお休み。
──あれ。何気に二人が一緒のお休みって初めてかもしれない。今日はどうしようかなぁ。前回、食器とか見に行けなかったし行っちゃう? やだ、なんかそれってデートみたい?
まだ何も約束すらしていないのに、勝手な妄想で勝手に盛り上がっている。早く目が覚めてしまった私は口元をニヤニヤしながら朝食の準備を始めた。
あの会社での一件以来、小笠原さんはいつもと変わらない。私は平静を装えば装うほどぎこちなくなっているというのに。
──だって、無理だって。あんなことされたらついついにやけちゃうよ。でも……小笠原さんはなんであんなことしたんだろう? やっぱり仕事でかなり疲れていたのかな?
「片桐さんおはよう!」
「!!……っ。小笠原さん!え?い、いつの間に」
気づくと小笠原さんが対面式のキッチンを覗くように私を見ている。急なことで平静さを装うバリアをしていなかった私はぎこちなさ満載だ。
「片桐さんって、何か考え事するとすぐ自分の世界に入っちゃうよね。何回か呼んだんだけど」
……はい。いつも申し訳ないです。
「スミマセン。つい色んな妄想していたら没頭しちゃって。悪い癖ですよね」
「いいんじゃない。そういうのも片桐さんらしくて可愛いし。でも妄想って、何を妄想してたの?」
私は小笠原さんの問いに言葉が詰まってしまった。
──あの時のことや小笠原さんとのデートを妄想していたなんて絶対言えない。……ん?今、かわいいって言った?
私は茹で蛸みたいに顔が赤く熱くなってしまった。料理するスピードもなぜか速くなる。
「え─っと……あの。そうそう!山田さんのお友達に面白い人がいて、そこからなんか漫画のネタが生まれないかな─って色々妄想しちゃっていて」
「……ふ──ん」
それだけ言った小笠原さんは急に無口になり新聞を読み始めた。
──へ?また急に機嫌悪くなった?いやいや、せっかくの休日だ。なんとか楽しい休日にしたいじゃない!
「あの小笠原さん。もし良かったら今日一緒に……」
“ピンポ──ン”
── ハァ──、一気に脱力感。もう!誰よ、こんな朝っぱらから。タイミング悪い。
私は玄関に向かい、間の悪い客人を出迎えようとした。