【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?


「どう見ても拓実くんのタイプじゃないでしょ!大学時代から拓実くんと僕のタイプって似てたじゃない。香菜さんは正直僕のタイプじゃないんだよね─」

──はぁ!?なんなのこの男。めっちゃくちゃ失礼な奴じゃない!

原社長は空気が読めない男なのか。
こちらの事情お構い無しで自らの話に夢中になっている。まだまだ続きそうだ。

「あの時もそうだ。大学時代、僕が好きだった女の子はことごとく拓実くんのことが好きだったよね─。大学の時、僕に彼女が出来なかったのは拓実くんのせいだと思わない?!それにあの時も……」

──それってタイプが同じっていうより、ただその女の子達があなたより小笠原さんのことが好きだっただけじゃない? ただの偶然でしょ。

チラッと目を向けると、小笠原さんもウンザリそうな顔で溜め息をついている。

「あ、あの─。ここではなんですから、とりあえず家の中に入りませんか」

「え─!香菜さん入れてくれるの?やっさしい─。拓実くんったら入れてくれたことなくていつも門前払いなんだよ。じゃあ、お邪魔しま─す」

こちらが手招きするよりも先に原社長は勝手にリビングの方へ上がって行ってしまった。

──え? 勝手に入れちゃいけなかったかしら。

小笠原さんの顔を見つめた私に呆れた声で一言。
「原は何かネタを探しているの、片桐さん忘れてない?」
と呟いた。

……あ!
最近、幸せボケが続いていたせいかすっかり忘れていた。

「ごめんなさい!友達って聞いてつい。失礼かもしれないけど今からでもお帰り頂きましょうか」
相手は社長だ。本当に失礼になってしまう。

またもや大きな溜め息をついた小笠原さんは苦い顔をしながら……
「いや。あいつはしつこいからな」

その言葉を残して原社長に続き小笠原さんも家の中へ戻っていった。

──なんで今日に限って。せっかく一緒のお休みだったのに。いや、私が招いたのがいけないんだけどもね……でもぉ──!

なんとも言えぬ感情のせいで私はついドアを荒く閉めてしまった。
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