【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
この時期にしては空気が澄んでいて上から見る夜景がとても綺麗に見える。
ネットで夜景の綺麗なレストランを探してなんとか予約も取れた。
ここは少し高台にあるお洒落なレストラン。お洒落だけれどもそんなに高級じゃなくカジュアルにも使えると評判らしい。
このレストランの前で、はるちゃんと待ち合わせをしたんだけど、待っている間はなんとも言えない緊張感が襲ってくる。
でもその緊張感の中で俺は、小笠原さんにかかってきた電話の主“香菜”という名前が気になった。確か香菜って……
「山田さん!」
好きな人から自分の名前を呼ばれるだけでドキドキする。俺は中学生か!と自分にツッコミを入れ平静さを保とうとしていた。
そしてはるちゃんがレストランを眺めながら俺に近づいてくる。
「山田さん……もしかして今日、ここで食事ですか?」
「そうそう。たまには居酒屋とかじゃなくて、こういったレストランで食べるのもいいんじゃないかと思って」
「やった─。実は私、このレストラン一度来てみたかったんです!夜景が綺麗だからって前、麻希に聞いたことがあったので」
──よしっ!
俺ははるちゃんの見えないところで小さなガッツポーズをした。本当は麻希ちゃんにも少しリサーチをしていたのである。
「じゃあ、時間だしそろそろ入ろうか」
「はい!」
── くぅ─。今日のはるちゃんは可愛いな─。食事の約束をする時に、思いきってスカートを履いてきてって言ってしまったけど言って良かった!
いつもと違って髪をアップにし、ブルーのワンピースを着て清楚系な感じに仕上がっている。前に会社に着てきた格好と少しまた違って目で追ってしまう。
特にうなじ辺りが……
俺はハッと我に返り邪念を振り払うかのように頭をブンブンと横に振った。
──いやいや。何をやらしい目で見ているんだ俺は。
店員に案内された席は夜景が綺麗に見える窓側の席。はるちゃんは窓の外を見ながらずっと笑顔を絶やさずにいてくれる。
「あ。はるちゃん!これ……仕事の関係者から花束を貰って。もし良かったら貰ってくれるかな?」
さすがに大きな花束はどうかと思い小さくまとめたフラワーアレンジメント的なお花を買ってきたのだ。……でもやっぱり自分からとは言えなかった。
「わぁ─可愛いお花ですね!ありがとうございます」
はるちゃんは花の香りを嗅ぎ笑顔が更に増したのが俺は嬉しかった。
「はるちゃん。漫画のほうはどう?コンテストの準備は順調?」
「ん─そうですね……コンテストまで一ヶ月を切ってそろそろ仕上げなきゃいけないのに、締め切りギリギリになりそうで」
「そうなんだね。あとは何を仕上げなきゃいけないの?」
「あ─、あとはラストに遊園地でのシーンを加えたいので、遊園地の取材に……」
そこまで言ったはるちゃんは急に下を向き、少しはにかむように微笑んだ。
その笑顔はさっきとは違う感情の笑顔に俺はなにか不安を感じた。