【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
しかしそれよりも今は、はるちゃんの“遊園地”というワードを聞いて俺はチャンスだと思った。
この取材を盾にすれば、はるちゃんをデートに誘いやすいのではないか。そう考え喜んだのも束の間、一瞬にして自分の情けなさにも気づかされた。
── ハァ─。デート一つも誘えないなんて……本当に俺はポンコツだな。
「は、はるちゃん!もしよかったらその遊園地の取材、俺も同行していいかな?」
その言葉にはるちゃんは、一瞬俺の方を見つめ何か言いたそうだったが、すぐに視線を落として違う言葉を探しているように見えた。
「あの─。えっと、ごめんなさい。ちょっと先約で、その人と行くことになっていまして……。あ!でもまた違う取材の時は山田さんにお願いしてしまうかもしれません」
「あ、ははは。そっかぁ先約かぁ。じゃあ仕方ないよね」
──誰だ?!先約って。麻希ちゃん? 弟くん……は海外か。まさか男? ……小笠原さん?
それからはその先約相手や告白するタイミングなどが頭をぐるぐる駆け回って、食事どころかはるちゃんと何を会話したのかもあまり覚えていない。
食事が締めのデザートに差し掛かった時、俺は覚悟を決めた。
「……はるちゃん。本当は今日、はるちゃんに伝えたいことがあってここに誘ったんだ」
「伝えたいこと?」
はるちゃんは急に真剣に話す俺に、いつもと違った雰囲気を感じ取っているみたいだった。俺をジッと見つめてくる目に鼓動が速くなってドキドキしてしまい……つい
「お、俺と結婚してくだしゃい!」
──いや!違うだろ─!何を言っているんだ俺は?! それに噛んでるし─
本当は“付き合ってください”と言う筈がテンパってなぜかこんなことに。恥ずかしさと情けなさで反応が怖くて、はるちゃんの顔が見られない。
しばらく無言でその状態が続いた後、先に口を開いたのははるちゃんだった。
「山田さん、ありがとうございます。いつも迷惑ばかりかけてしまう私をそんなふうに思ってくれていて嬉しいです」
そこまではるちゃんが言った時、俺は勢いよく顔を上げ、はるちゃんをジッと見つめ直した。
「……山田さんはいつも助けてくれて頼りになって。でも、あの……私いつも鈍感で山田さんの気持ちに全く気づいてなくて。あ、そうじゃなくて……なんと言うか山田さんは私にとって大事な人なんですが、その……それはお兄さん的な感じで……」
いくら俺がポンコツでも、はるちゃんの言葉や態度のニュアンスでなんとなくその後の言葉に察しがついた。俺は落ち込む姿を隠し一生懸命笑顔を振り撒いた。
「きゅ、急にごめんね。大丈夫。なんとなくそうかな─って自分でもわかっていたから」
「……すみません」
はるちゃんは申し訳なさそうに肩を落としている。
「じゃあ、引き続き編集者として友達として、また宜しくお願いします」
「あ、いえこちらこそです。宜しくお願いします」
俺の全然平気─という雰囲気に少し安心したのか、はるちゃんに少し笑顔が戻ってきた。ついでと言ってはなんだがもう一つの誤解を解いておこうと思う。
俺は新人大賞を取った時のことを、はるちゃんに全て白状したのだ。