【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
臨時花嫁
──次の土曜日
ここは騒がしい町から遠く離れた場所。
その高台にある教会『セント・ムーンペリア大聖堂』は、広大な敷地にポツンと立っている。とても綺麗なステンドグラスが映える大きな教会だ。
とても静かなこの場所の正門には大きな桜の樹が植えてあり、これから誓いを立てるであろう恋人達を出迎えている。
結婚情報誌によると、カップルが結婚式を挙げたい教会No.1らしい。
「かわいぃ─、あなたがはるちゃんねぇ─。山ちゃんから聞いてますよぉ─。片桐さんはぁ、こういうバイトは初めてぇ?」
え。男……いや、女?……スーツ着てるしやっぱり男性だよね。私はあまりのおねぇキャラの強烈さに挨拶をしていないことに気が付いた。
「あ、はじめまして!片桐 晴と言います。山田さんから花嫁役のバイトをお伺いしまして……その、松木さんでしょうか?」
「あらぁ、ごめんなさい。私ったら名乗っていなかったわねぇ。私は松木 丈之助って言うの。まっちゃんって呼んでねぇ」
「ぶ、は……はい」
じょうのすけ……おねぇ口調から想像できない男らしい名前だっから、思わず吹き出しちゃったよ……脇役キャラに使えそうだなぁ。
話し口調とは反対にスーツをビシッと着こなしているのは、松木 丈之助(28)。
このセント・ムーンぺリア大聖堂かつ隣にそびえ立つ5つの披露宴会場『ウェディングヒルズ』のウェディングプランナー兼統括リーダー長というちょっと長い肩書きを持っている。
──山田さんからは大学の同期の友達とだけ聞いていたけど、まさかそっち系の人だったとは。
「今日はねぇ、午前中に模擬挙式と挙式だけのお客様が2組も入っていてちょっと忙しいのよぉ─」
松木さんについていきながら辺りを見渡すと、確かに多くのスタッフがバタバタと忙しそうに動き回っていた。
そっか。スタッフさんの動きを見ていると結婚式会場の流れがわかるかも。松木さんの話、一言一句記憶しなくっちゃ。
「じゃあ、はるちゃんはここの控え室を使ってねぇ。もう少ししたらスタッフがお手伝いにくるからぁ」
「はい、宜しくお願いします!」