【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
私と小笠原さんが住む最上階の部屋と、さほど違わない一階下の原社長の部屋。
小笠原さんの部屋に初めて入った時は、散らかり放題でビックリしたけど、原社長の部屋は玄関からキチンと整頓されていて物が少ない印象。
私は玄関の前で部屋の中に上がるのをためらっていた。
──やっぱり早まったかもしれない。あ―私は一体何をやっているんだろう。のこのこと敵対するアジトに入るだなんて……。
「どうしたの、そんなところで?入ってよ」
私は片手を前に出してストップするようなジェスチャーで直ぐ様断った。
「いえ!すぐ帰りますのでここで結構です」
腕を組み壁に寄りかかっている原社長は、そう言った私をジ─と無言でずっと見つめてくる。その視線が何だか痛くて私は目線を避けてしまった。
──な、何? なんか原社長怖いんですけど。もう、今すぐ帰ろう!
「あの原社長。ここに連れてきて頂いてなんですが、私そろそろ戻らないといけないかな─って。……お邪魔しました──」
急いでドアノブに手をかけ出て行こうとした瞬間、原社長がドアノブを握った私の手を覆うように掴み、そのまま逆にドアを閉めたのである。
「勝手に帰らないでね─。まだ香菜さんには話すことがあるんだから─」
そう言いながら突然、私をお姫様抱っこのように抱き上げながら強引に部屋の中へ連れていったのである。
「ちょ、な、原社長!何するんです、下ろしてください!」
「ちょっ、暴れると危ないよ─!」
パニックになった私は原社長の腕の中でバタバタと手足を激しく動かす。
原社長もさすがに抱えるのが無理になったのかリビングに着くなりソファーに私を下ろした。
──や、やっぱりこの社長危ないよ。何するかわかったもんじゃない!
「香菜さんは力がすごいね。僕、結構力があるほうだけど、さすがにベッドまでは無理だった」
「ベッド?!」
その言葉を聞き私は思いっきり身構えた。頑なな私の姿を見た原社長はクスクスと笑って「冗談だよ─」と一言だけ呟く。