【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?


「え─どうしよっかな─。晴さんがどうしてもって言うのなら考えなくもないけど─」

原社長は私のお願い事に含みのある意地悪い感じで答えてきたのだ。

「お願いします!」

「うん。いいよ─。でもその代わり、うちの出版社で漫画を出すことと……僕の恋人になってよ」

──へ……恋人? 今この人、恋人って言ったぁ?!

「意味わかりません! な、なんで私が原社長の恋人にならなきゃいけないんですか。原社長だったら他にいくらでも彼女作れるでしょ。お断り致します!……あ、漫画のほうも」

何だかおちょくられて段々と腹が立ってきた私は、急いで帰ろうと立ち上がり玄関の方へ向かおうとした。

「あれ─、お願い事はいいの? 僕、しゃべっちゃうかもしれないよ─」

私はその言葉で一度は立ち止まったが、鼻息を荒くして再び玄関のほうへ歩きだしたちょうどその時……

“ピンポ─ンッ、ピンポ…ピンポ…ピンポ…ピンポ─ンッ─……”

玄関のチャイムがうるさいほど連続で鳴ったのだった。
そして今度はドアをドンドンッと力強く何回も叩く音。

──何事?!

「もう、誰だよこんな時間にぃ─」
原社長は面倒くさいな─といった感じで、重い腰を上げ廊下に立っていた私を追い越し玄関へと向かう。

「ちょっと。そんなドア叩かなくても聞こえてるよ! ドア壊さないでよね─」

ブツブツと文句を言いながらドアの鍵に手をかけ開けた瞬間、ドアが勢いよく開き小笠原さんが飛び込んで来たのである。

「片桐さん! 大丈夫?! こいつに何かされなかった?」
「小笠原さん! どうしてここに?」
「ちょっと拓実くん! 僕今、頭ぶつけたんだけど─」

三人ともピタッと一瞬固まってそれぞれの顔を見合っている。
あ──、なんか三人同時に会話が被ったから誰も内容を聞き取れていない!
とりあえず、私からまた一声を発してみた。

「え─と……小笠原さんはどうしてここに?」

「え、あ。さっきエレベーターで原と一緒に乗っていくのを見てそれでって……そんなことより片桐さんはなぜこいつに着いて行ってるんだ!」

「いや、だって、原社長が強引に……じゃなくて、元はと言えば小笠原さんがいけないんです!」

「お、俺? いや、片桐さんだっていつも人の話しを聞かないじゃないか。さっきだって話しも聞かずに飛び出して」
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