【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
今の季節、夏に向かっているとはいえ夜になるとまだまだ体が冷えてしまう。
コートも何も来ていなかった私達は尚更、体が冷たくなっていた。ワイシャツ1枚でいた小笠原さんはとくに。
「フ……フックシュン!」
──小笠原さんのクシャミ可愛い!
咄嗟にそう思ってしまった私はニヤける自分の顔を悟られないようキッチンへと向かった。
「大丈夫ですか?体冷えてしまいましたよね。今、温かい珈琲でも入れますね」
「ああ、ありがとう」
珈琲を入れている間でさえも私の心は落ち着かない。
ソワソワして小笠原さんが動くたびにチラチラと目で追ってしまう。でも恥ずかしさからか自信の無さからかジッと見つめることができなかった。いつもの珈琲の入れ方も所々忘れるぐらい自分が動揺しているのがわかった。
なんとか珈琲も入れ終わり、ダイニングテーブルに先に座っていた小笠原さんの元へ持っていく。その間もカップを持っている手が緊張して少し震える。
これから私はどんな言葉を聞き入れるのか、心配でもあり興味もあり怖さもあり……そんな気持ちを抱えていた。
「珈琲どうぞ」
「ありがとう。片桐さんも座って」
小笠原さんに促されるまま私は向かいの椅子に座った。座ってからも小笠原さんを直視できない。
私達は珈琲を一口飲んだのを合図に、しばらくの間二人の世界へと入っていくのだった。
───────……
「最初は香菜のことでいっぱいいっぱいだったから、片桐さんのことは正直同居人とだけしか思っていなかった。考えなしに動いて無鉄砲でお節介で、いつも俺の想定内を飛び超えてくる人だとは思っていたけど」
私はその話しで少し苦い顔をした。
「え、今さらダメ出しですか?」
ダメ出しという言葉に反応したのか、何かを思い出したのか小笠原さんがククッと笑いながらそれを否定してきた。
「違う、違う。いい意味でってこと、続きを聞いて」