【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?


小笠原さんは笑いを一緒に飲み込む為、ゴクンッゴクンッと一気に珈琲を口に入れた。そして、一息ついたところでまた話し始めたのだ。

「片桐さんを好きだっていう気持ち……気づいたのは最近なんだ。でも今思うと、片桐さんが俺を看病してくれた辺りから少しずつ惹かれ始めていたのかもしれない。正直その後は自分でも気づかないままずっと嫉妬の嵐だった」


“片桐さんを好きだっていう気持ち”


その言葉で私はまた視線をテーブルに移し照れが止まらなくなった。でもどこかで引っ掛かっているのは香菜さんのこと。

香菜さんの話しは聞きたいようで聞きたくないようで……とりあえず今は小笠原さんの話しに集中した。

「山田と親しいのにも原に触られるのも、何もかもにもムカついて……でも山田が片桐さんに告白すると聞いた時、同居を解消したほうがいいのかなと思ったんだ」

「え……山田さんの告白が、なんで同居解消に?」

「山田に同居解消をお願いされたこともあるけど、俺は片桐さんも山田のことが好きなんじゃないかと思って。だからこのままだと二人に悪いなと」

「ちょ、ちょっと待ってください!私、山田さんの告白はお断りしたんですよ」

私のその言葉に目を丸くして驚いている小笠原さんは一気に安堵したのか、テーブルの上になだれ込み頭を抱えた。

「……なんだよ─、俺の勝手な勘違いかよ。めっちゃ恥ずかしいじゃん」

「でも!私はすごくうれしいです。小笠原さんがそこまで考えてくれてたんだなって思うと……それに、私も」

──泣いたりわめいたりしているばかりで、まだ自分の気持ちを小笠原さんにちゃんと伝えていない。

躊躇している私の心を見透かすように、テーブルになだれ込んでいた小笠原さんは上目遣いで私をジ─と見つめてきた。

「……で、片桐さんはなんで泣いてたの?俺への気持ちって聞いてもいい?」

下を向いてばかりの私はこの時お兄さんの言葉を思い出していた。

“ちゃんと話し合わないとお互い誤解を生んでしまうってこと”

本当にその通りだ。
私は目を閉じ小さく息を吐くことで自分の心を入れ替えた。
そして、私の目線は小笠原さんの目を真っすぐに捕らえ見つめ直す。

自分の心に自信を持って……


「私も……小笠原さんのことが好きです」
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