【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
今日は私と小笠原さん、それにお兄さんと香菜さんの4人で逢うことになっている。
小笠原さんから香菜さんの話しを聞いた時は正直驚いた。驚くのと同時に香菜さんに対して怒りという感情も湧き出てきたのだ。小笠原さんがあまりにも可哀そうで……今日、ギリギリまで香菜さんと顔を合わせるのを迷っていた。
けれど、小笠原さんは何だかもう吹っ切れているような感じで、反対に渋っている私のほうが子供のように思えたのだ。
──18時・夕刻……──
私は腕時計で時間を確認し、もう小笠原さんやお兄さん達は来ているだろうか。香菜さんだけだったら気まずい……などと思っていたけれど、恐る恐る喫茶店に入ると既に三人共が席に着いていて私の取り越し苦労だったようだ。
「あ、兄さんは本当の名前は初めてだったよね。こちら片桐 晴さん。漫画家さんで今、俺と一緒に住んでいる大事な人」
その言葉にまた照れてしまい口元が緩んでしまったが、すぐ我を取り戻し率直な小笠原さんの言葉に少し驚いてしまった。
仮にも結婚しようとまで思った元婚約者を前に、そんなにハッキリ言ってしまっていいものなのだろうか。
私は、香菜さんをチラッと見つめると特に何も気にしていない様子。反対に私の視線に気がついた香菜さんと目が合ってしまった。
「はじめまして、片桐さん。私、百田 香菜と言います。お話しは拓実さんに伺っていて。この度は私のせいで色々とご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
そう言って香菜さんは深々とお辞儀をしてきたのだ。その謝る佇まいもやはり美しいなと、女性の私でさえつい思ってしまうほど。
「あ、いえ……。あの、それで……お二人は結局、よりを戻されるんですか?」
私は小笠原さんの様子を伺いつつも、前置きをせず核心に触れる質問をしてみた。突然の質問に香菜さんとお兄さんは驚きながら目を合わせつつも、お互い優しく微笑んでいた。
その二人の姿を小笠原さんはどんな気持ちで見つめているのだろうか。小笠原さんの気持ちを考えると、とても胸が痛くなる。
「大丈夫だよ、片桐さん。前々から話し合っていた俺はもう大丈夫だから」
私の気持ちを先に察した小笠原さんが自分の気持ちを咄嗟に伝えてきたのである。