【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
スタッフと私が飛び込むように入ったその部屋は、誰かの控え室のようだった。
ドアの外には両家の名前が書かれた立札が置いてあったと思うが、息が切れかかっている私にとってはそんなものじっくり見られるわけがない。
当然、ゼーゼー言っている私に部屋の中を見渡す余裕もなかった。
──っていうか、このスタッフ息切れもしていない。さすがいつも機敏に動いているだけある。
いやいや今はそんな感心をしている場合じゃない。
どうやら私はこのスタッフに百田さんという花嫁に勘違いされているらしい。早く誤解を解かなければ……
ようやく息が普通に吸えるほど整ってきた私は顔を上げて訂正しようとした時。
「え、なんで?!」
…………ん。アレ。聞き覚えのある声。いやいやまさか!
「……なんでここに」
そう言われた瞬間、自分の思い違いではないことに気付かされた。
「小笠原さん……?」
なんではこっちのセリフよ。どうしてここに小笠原さんがいるのよ。それにタキシード?
「なんだ、なんだ─。新郎新婦が固まっちゃって。拓実─、新婦の綺麗な姿見て驚いたのかい」
固まりまくっていた私達の間に入ってきたのは、長身で茶髪に丸縁メガネをかけている明るい感じの男性だった。
「あ。いや……」
……そうだ。確か小笠原さんが結婚するって言ってたっけ。あまり記憶にもなかったけど。……え。まさか結婚式って今日のうえにこの式場だったの?!
「百田 香菜ちゃん、はじめまして─。拓実の兄の小笠原 御幸です。やっと拓実のお嫁さんに逢うことができたよ─。こいつかなりの秘密主義で今までなかなか逢わせてくれなかったんだもん」
お兄さんの言葉で私と小笠原さんは慌てて「違う」という言葉を伝えようとしたが、間髪入れず「本当だよ」と、お兄さんの隣にいた小柄の可愛らしいおばあちゃんが話しかけてきた。