【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
壇上は高めに設定されており、その後ろには “出版社QED 創立記念パーティー” と書かれてある式典看板が掲げられている。
「ちょっとここで待ってて」
小笠原さんはその言葉だけ残し私の元を去って行った。
私はゆっくりと辺りを見渡す。壇上の前だからかさっきいた後ろのほうと違って名高い有名人が多い気がする。
自分がこのような前にいていいものだろうかと恐縮し始めていた頃、「晴さん。来てくれたのね」と突然、小笠原さんのおばあ様に話しかけられたのだ。
「おばあ様。……先日は色々とすみませんでした。おばあ様を騙すような真似をして……」
「もういいのよ、それは済んだこと。それより、これからもずっと拓実のこと宜しくお願いします」
そう言って、おばあ様は私に向かって深々とお辞儀をしてきたのである。
「──?……あ、いえ、頭を上げてください。私の方こそ宜しくお願いします」
私はその場に加えおばあ様の丁寧なお辞儀に更に恐縮してしまい、釣られて私も深々とお辞儀をした。
と……その時、急に会場の明かりが消え一瞬にして辺りが真っ暗になった。
周りの招待客達がガヤガヤと騒ぎ始める。私も何事かと暗い中をキョロキョロとしながら慌て始めていると、隣にいたおばあ様から「幸せにね……」という呟く声が。
そして会場に設置されていた全ての照明が目の前にある壇上に一気に注がれたのである。
突然目の前が煌びやかになり私の目は少しの間チカチカしていたが、その中でも光の先を見つめると小笠原さんがマイクの前に立っていたのだ。
「……小笠原さん?」
壇上にいる小笠原さんを確認したのと同時に小笠原さんは私を見て優しい顔で微笑み、今度はゆっくりと招待客に向けて話し始める。
「本日はQEDの創立記念パーティーにお集まり頂きありがとうございます。これもひとえに皆様のご支援の賜物と心より感謝しております。……そしてこの場をお借り致しまして皆様にご報告したいことがございます」