【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
その瞬間、女性客からはキャッ─!と黄色い歓声があがり、他の招待客からも拍手が一斉に沸き上がる。
私の頭は処理しきれない情報量が多くて完全にショートし拍手の中、立ち尽くすことしかできなかった。
そんな私の手を小笠原さんは咄嗟に掴み、壇上横で待機していたお兄さんに「兄さん、後はよろしく」とだけ言って私達はその場を全速力で立ち去ったのである。
私は小笠原さんに手を引かれるまま外に出て人が少ないプールのある庭のほうまで走っていった。
「お、小笠原さん!……ちょ、このヒールで走るのはきついです─!」
ゼ─ゼ─言っている私に気づいた小笠原さんはピタッと止まり、近くにあった小さな一人用ブランコに私を座らせてくれた。同時に履いていたヒールを脱がせ、靴擦れしているところを探しながら私に聞いてきたのである。
「何もかも突然でごめん。驚いた?」
「当たり前です!まさか小笠原さんがQEDの社長になるなんて全然聞いてませんでしたし、それに……お兄さんはどうなるんですか?」
「兄さんは元々仕方なく社長をやってたから……本当は海外に行って他に勉強したいことがあったんだ。それで今回思い切って留学することにしたらしいよ、香菜さんと一緒に。まぁまた戻ってきたらどうなるかわからないけど……って、そっち?」
「え?」
「……俺、まだプロポーズの返事聞いてないんだけど」
──あ! 情報量が膨大過ぎて一瞬忘れてた……何してるんだろう、私……
不満そうな小笠原さんに言われ改めて壇上での小笠原さんのプロポーズを思い出した私は、冷静になると共に段々と照れと嬉しさが込み上げてきた。
そしてブランコに座る私の前にしゃがみこんだ小笠原さんが上目遣いで私を見つめてくる。その真っ直ぐな目に私も真っ直ぐ見つめ返す。
私達は目を閉じゆっくりと唇を重ね合わせ──「……片桐さん、俺と結婚して」
その瞬間私の目には涙が溢れ止まらなくなる。私はこれまでにない笑顔で小笠原さんに力強く抱きつき元気よく答えた。
「はい!」
私達はお互いを強く抱き寄せ将来を誓った。
──これからも先……生涯を共に。