Rain shadow─偽りのレヴェル─




それは双子に生まれたわたしにしかできないこと。

だから、双子に生まれて良かったと心底思った。


でも、わたしが完全に家でも外でも男として生きると決心させられた出来事は、そのあとだった。



「……なに……これ、」



もちろん家ではお兄ちゃんだから、水本 爽雨だから、部屋は兄の部屋を使う。

服だってそれまで兄が着ていたもの。


幸い、私立高校の制服を着る朝と帰宅時は、母親の脳内では「女装なんかしちゃってどうしたの?」と捉えられているらしい。


今日もリビングからはお母さんの鼻歌混じりの調理音が聞こえてくる。

「爽雨ー?もうそろそろご飯よー?」と、機嫌は良さそうだった。


そんなわたしは兄のベッド下に隠されていた、とある一冊の日記を手にして固まっていた。



「……だれが……、書いたの…?」



それくらい、日記に綴られている兄の姿はわたしが知るものとは正反対だったからだ。



11月6日。
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なにがお兄ちゃんだ、双子だろう俺たちは。
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俺はしっかり者でもなんでもない、でも昔からあいつが泣いてばっかりだから俺がしっかりしなくちゃならなかったんだ。
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深雨だっていつまでも俺に甘えんなよ。
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