Rain shadow─偽りのレヴェル─
「こんなかんじ…、ですか、」
「……たき…?」
「おれも、します、……女扱い、」
抱きしめ……られてる……。
びっくりしすぎてされるがまま、それをいいように背中に当てられた手は離す気はないみたいで。
「いや、あのね瀧、…僕は男だから、それはして欲しくないなぁっていう……話だったんだよ…?」
「……はい、…でも、爽雨さんだっていつも、さっきも、おれの頭撫でるじゃないですか、…そのお返しです」
「……」
そう言われると何も言えなくなってしまった。
確かにわたしだって瀧を男の子扱い?していなかったかもしれない。
男の子というよりは、弟みたいだから。
「……あなたはすごく…あったかいです、」
それでもわたしより身長は高くて、こうして密着しているとガッシリとした身体の線が伝わってくる。
声だって女の子とは言えない独特のかすれ具合が備わっていて。
「…おれは小さなころ…ベランダにしょっちゅう放り出されてたから、」
そう言われて思い出したのは、彼が抱えた過去。
母親から受けていたらしい暴力。
「寒くて凍え死にそうで、そのときもマフラーひとつで身体を温めてました」