Rain shadow─偽りのレヴェル─
気づけば背中に回していた。
そんなわたしの動きに驚いているのは瀧。
どうして瀧がびっくりしてるのって言葉すら、抱きしめ返した動きに託した。
そのときからマフラーをしていたのなら、そのマフラーは家族のようなものだね。
だからあなたは今も大切に身につけているんだ。
「っ……、ぅ…っ、」
「……え、爽雨…さん…?」
止まらない。
だめ、言葉にもならない。
だから代わりに涙が出てくる。
男になってるときは泣かないって決めてたのに……。
「ごめんっ、泣き止む、ちょっと待って、そろそろ帰らなきゃだ、」
「…ごめんなさい、泣かせてしまいました」
それは誰かにつぶやくような言葉だった。
思わず身体を離そうとすれば、今度は引き寄せてくる。
こんなところを誰かに見られでもしたらとんでもないことになりそうだけど…。
「おれ、…あなたに会えてよかったです」
「…僕もだよ、」
「それもそうなんですけど……、いや、なんでもないです」
ゆっくり身体は離れた。
泣いている姿を弟のような後輩に見せるのが急に恥ずかしくなって顔を逸らせば、くすっと笑われてしまう。