Rain shadow─偽りのレヴェル─
「…マフラーしててよかったって、また思いました、」
「え、わ、……、」
ふわっと、わたしの頬に落ちる涙を拭ってくれたのは、その鱗模様。
総長だなんて到底思えない。
それはいい意味で、だ。
この子が誰かを殴るところなんか想像できないよ。
「あ、ちゃんと血とかは毎回洗って落としてるんで汚れてはないです」
「……」
いや、想像できました。
そんなこと言われたら余計に怖くなるよ…。
でも、あなたはそんな顔をするんだね。
ほんとうに飲み込まれてしまいそうだ。
溶かされてしまいそうなくらい、熱を帯びた目をしてる。
「……柔らかい、」
そっと、マフラー越しではなくわたしの頬に直に触れてくる。
涙の跡をなぞるように撫でて、優しく包み込むように。
「よ、よく言われるけど…僕は男だから、」
「……はい、」
よく見ると彼は綺麗な二重ラインをしていた。
毒を持っているとは到底思えない、整った顔立ち。
「…瀧は、男が好きだったり…?」
「……もう、それでいいです」
「え、」
とんでもない発言をしてきた……。
え、そうなの……?