Rain shadow─偽りのレヴェル─
「ぼ、僕はたまにこういう反応をしてしまうときがあって、でも深い意味はなくて…!
ほら双子の妹がいるんだけど…それが移るっていうか、その、」
「───…姉、なんです」
「え…?」
「この人はおれの、姉さんです、」
奪われた写真を差し出されるように見せてくれる。
わたしが不安に思っていたことは別に気にもなっていなかったように、瀧は瞳を落とした。
「…血は繋がっていないんですけど…そういうの気にする人じゃなくて、本当の弟みたいに昔からおれのことを可愛がってくれて、」
うん、顔が似てないなぁって思った。
他校の制服姿で無邪気に笑う女の子と、まだ中学生の学ランを着ている瀧が並んで写っている写真。
照れたようにマフラーで口元を隠している彼は、わたしもよく知っていた。
「…このマフラーも小さいときに姉さんがくれたもので、」
だから毎日肌身離さず付けている理由として、そのひとつもあるんだろうと。
「でももう今は……会えない、ですけど、」
「……、」
思い出した。
この場所で佐狐は少しだけ教えてくれたの。
彼にはお姉さんがひとりだけいるって。