Rain shadow─偽りのレヴェル─




もう開けて大丈夫だよ───そう言われた気がして、ぎゅっと閉じていた目をうっすら開いてみる。


まるでそれはあなたのシンボルだ。

転がるように倒れている3年生の中に立った存在へ視線を移すと、いちばん最初に目に入ったのは風になびく鱗模様。



「……たき、…どうして、」



わたしの弱々しい声に返事をすることなく、まだ動こうとしている男に容赦なく制裁を加える後輩は、見たこともない表情をしていた。


たぶん彼はものすごく怒っている。


きっと本当の彼はそんなふうに、いつも感情が顔に出やすかったりして。

だから見透かされないようにマフラーで隠しているのもあるのかな。


落ち着いてそんなことを考えてしまうくらい、ただわたしは目の前の光景を見ていることしかできなくて。



「クソッ……っ、」



死に物ぐるいで屋上から逃げようとしたひとり、それでも逃がすまいと瀧は追うことをしなかった。

だって、屋上の扉を封鎖するように立つ存在がもうひとり居たから。



「ひっ、ひぃぃっ、」



伸びる影の正体を目にした途端、3年の男は怯えたように身体を震わせてうずくまった。



< 110 / 364 >

この作品をシェア

pagetop