Rain shadow─偽りのレヴェル─
もう開けて大丈夫だよ───そう言われた気がして、ぎゅっと閉じていた目をうっすら開いてみる。
まるでそれはあなたのシンボルだ。
転がるように倒れている3年生の中に立った存在へ視線を移すと、いちばん最初に目に入ったのは風になびく鱗模様。
「……たき、…どうして、」
わたしの弱々しい声に返事をすることなく、まだ動こうとしている男に容赦なく制裁を加える後輩は、見たこともない表情をしていた。
たぶん彼はものすごく怒っている。
きっと本当の彼はそんなふうに、いつも感情が顔に出やすかったりして。
だから見透かされないようにマフラーで隠しているのもあるのかな。
落ち着いてそんなことを考えてしまうくらい、ただわたしは目の前の光景を見ていることしかできなくて。
「クソッ……っ、」
死に物ぐるいで屋上から逃げようとしたひとり、それでも逃がすまいと瀧は追うことをしなかった。
だって、屋上の扉を封鎖するように立つ存在がもうひとり居たから。
「ひっ、ひぃぃっ、」
伸びる影の正体を目にした途端、3年の男は怯えたように身体を震わせてうずくまった。