Rain shadow─偽りのレヴェル─

恐怖の標準語





セミのこえ、あちらもセミで、ここもセミ───。

脳内に作り上げた俳句のひどさに、ため息すら吐けない暑さが際立つ夏。


気づけば夏休みに入っていた。



「あとはバニラエッセンスとバルサミコ酢……、もう、どこにあるか分からないのばっかりだよ、」



お母さんからお使いを頼まれたスーパーマーケットにて。


バニラエッセンスはギリギリ予想できるけど、バルサミコ酢ってなに。

バルサミコ酢……、

つぶやくだけで頭くらくらしてきた。



「にいちゃん!めんつゆ無かったからこれにした!」


「さんきゅー赤帆(あかほ)!…って、ちゃうわ!これバルサミコ酢や!!どっから出してくんねんっ!
めんつゆの代わりにバルサミコ酢持ってくる幼稚園児なんか聞いたことないわ!!」


「あははっ!!にいちゃんのツッコミ世界イチーーっ!!」



ありがとうバルサミコ酢。

いや、そこのわちゃわちゃ賑やかなご家庭さん。


この地域で関西弁はすごく珍しいけど、わたしは学校でも毎日のように聞いていたから新鮮味はそこまで感じなくて。



< 132 / 364 >

この作品をシェア

pagetop