Rain shadow─偽りのレヴェル─
「っ…!」
それよりも先に素早い動きがわたしを追い抜かしていった。
わずかな一瞬に目にした顔。
いつもの陽気な姿からは想像できないくらいの殺気が立っていて。
それはRavenの総長、烏間 赤矢だった。
「おい、なにしてんねん」
「あー?だれだテメェ」
「にいちゃん…っ!!───あいだっ!!」
と、まさかの赤矢は泣いていた弟の頭に容赦なくげんこつを食らわせた。
「なにすんだ…っ、うわぁぁぁんっ!」
「うっさいわドアホ!!またちょこちょこ動き回りやがって!!
そろそろ首輪つけたるで!?明日から買い物ちゃうくてお散歩したいんか!?」
「いやだっ!!にいちゃんがドアホっ!!」
え、ちょっと、そこで兄弟喧嘩……?
店員さん困ってるし、お客さんだって困ってるし、でもなんか微笑ましいし…。
だとしても大人のチンピラを前にしても怯えもしないところがまた彼っぽいなって。
「おいおい兄ちゃん聞いてくれよ。そのガキがよー、俺の足を踏んだくせ謝ってくれねェんだよ」
「……赤太、そうなん?」
「ちがうっ、先に“退け”って言ってオレのこと押したのはそいつだよっ!」
「…せやろな、お前はちゃんと謝るべく人には謝れる子やし」