Rain shadow─偽りのレヴェル─
本当に楽しいんだろうなって思わせてくる笑顔だった。
赤矢のいいところは、佐狐とは違うところ。
隠すような笑顔はしないのだ。
だから嫌なときは笑わないし、悲しいときは寂しそうな顔をする。
「……羨ましいな、」
「なに言ってん。お前やって確か兄妹いるとか言っとったやろ」
「…うん、まぁそうだけど、」
もういないんだよ。
爽雨になっているときは深雨が死んで、深雨になるときは爽雨が死ぬ。
もう2度と、両方が同じ時間を生きて、同じ時間で笑いあう日常はこない。
「それにしても赤矢、」
「ん?」
「関西弁なのは赤矢だけなのか」
気になっていた。
お父さんとお母さんはどこへ?なんて質問よりも、実はこっちのほうが気になってたりして……。
だって赤矢以外の兄妹たちはみんな標準語だから。
「あー、ならやめるか」
「えっ」
えっ、え……?
関西弁ってやめれるの……?
わりと難しいって言わない……?
そういう方言を急に戻すっていうのは。
「オレの家族、父親だけが関西生まれなんだ。だから親父はゴテゴテの関西弁だけど、オレは中学の頃までは普通に標準語だよ」