Rain shadow─偽りのレヴェル─
兄が死んだのは、それから1週間後の5月13日。
「……久遠 綾羽(くおん あやは)…って、だれなの…?」
また新しい名前だった。
親友とまで綴られていた久遠 綾都とは名前が似ているけれど、そうではなく。
わからないことだらけで、だけど震える字と涙の染みたルーズリーフが何よりの証だったから。
そして、その日記には最後、まだ続きがあった。
この日記を見つけてくれた妹よ、
────────────────────
俺の代わりにあいつを殺してくれ。
────────────────────
お兄ちゃんの代わりに、あいつを殺して、おねがいだ深雨。
────────────────────
「…あら?今日は帽子は被ってないのね~。あなたのお気に入りだったんじゃないの?」
「…ううん、もういらないからそんなの。…ねぇ母さん」
「ん?どうしたの?」
髪を切った。
バッサリと、迷いなく切った。
「僕、最近ずっと学校を休みっぱだったでしょ?1ヶ月近くも。
そろそろ行こうと思うんだけど、学校側はいろいろ知ってんのかな?」
「いろいろって?」
「ほら、深雨のことで色々あったからさ、…僕を死んだことにしたりしてないかなって」
今まで通ってた高校も辞めなくちゃいけない。
それでいろいろ上手く進めば、このまま兄のふりをして男子校へ通える。