Rain shadow─偽りのレヴェル─
少しずつでいい。
こうやって少しずつ、ゆっくり、戻すとは言わないけれど。
そのとき大切にしていた気持ちを思い出していけばいいだけだ。
「……で、なんでこうなんねん」
「成り行きで」
「どんな成り行きやねん!!人様のウチでカレー食ったうえ泊まるって……図々しいにも程ってもんがあるやろ!!」
「まぁ仕方ない、赤帆ちゃんは僕のことを好きになっちゃったみたいだから」
「……」
今もわたしの腕に腕をからませて、すりすりと頬を寄せてくる5歳の女の子。
そんなこんなでわたしはお友達の家に泊まっていくことになりまして。
「赤帆~、こいつはオススメせんで?兄ちゃんのほうが強くてイケメンやん」
「いーのっ!わたしそうくんすき!」
「ははは、振られたちゃったな赤矢」
「……うっせぇボケ」
いつか妹はお兄ちゃんの腕から離れる日が必ず来るんだから。
まあまあ許してよ、なんて笑うわたしはリビングに雑魚寝する兄妹たちに混ざっていた。
どうやら夏の時期はみんなお化けに怖がるため、クーラーを効かせたリビングで並んで雑魚寝が恒例行事となっているらしく。