Rain shadow─偽りのレヴェル─

迫り来る鬼





「瀧は入らないの?」


「はい」


「ちゃんと飲み物のんでる?さすがにマフラーだと熱中症になるから」


「平気です。慣れてるんで」



ビーチテントの下、わたしの隣を陣取るようにずっと体育座りをしている蛇島 瀧。


一応サーフパンツは履いていて、上半身は腕まで隠れるシンプルなラッシュガード。

そこにマフラーを合わせるというアンバランスさが逆に目を惹くものらしい。


通りすぎる女の子はチラチラと瀧を見ては勝手に照れて去っていく。



「なんかごめん瀧。苦手…だった?」


「いえ、大丈夫です」



こういう場所、ぜったい嫌いそうなのに…。

やっぱりわたしからの誘いは断れない彼には申し訳ないことをしたと思っている……けど。


目の前いっぱいに広がる青い海には、子供のようにはしゃぐイケメンたちがいた。



「うわっ!てめぇオレにかけたやろ!!ぶっ殺したる!!」


「なに?殺る?いいよ?」



もう、女の子の視線を集めてるんだから言葉には慎んでほしい…。

でもまさかカラスさんとキツネさんが仲良く行水してくれるとは思っていなかった。


夏休みも後半に差しかかって、みんなを海に誘ったのはわたしだった。



< 148 / 364 >

この作品をシェア

pagetop