Rain shadow─偽りのレヴェル─
「あぁ、そのことね!それなら大丈夫よ、あんな高校だもの。
ちょっとだけ長くかかりそうな怪我って言ってあるから」
「…そっか、ならよかった」
きっと兄は、こうなることを予測していてベッド下に隠してあったのだ。
母親が壊れることも、そして妹が自分のふりをすることも、最初から予想の範囲内。
お兄ちゃんは昔から頭脳明晰。
予想が外れたことなんか1度もない。
だからきっと、その4グループをまとめる組織として作ったRain shadow(レインシャドウ)でも幹部として名を上げていたんだと。
「お兄ちゃん、これでいいんだよね…?」
今日も雨だ。
梅雨時期の今日は、ポツリポツリと刺すように雨が痛い。
兄は着崩したりもしていなかった。
本当に真面目で、ほんとに不良高校に通ってるの?って思うくらいの見た目で。
怪我をして帰ってきたこともなくて。
ブレザー、スラックス、深い緑色をしたネクタイ、ありふれた男子高校生になって、目指すは薄暗い高校。
「あら爽雨くん!お母さんから聞いたけど大怪我しちゃったんだって…?大丈夫なの…?」
「はい、この通り。ご心配おかけしました」
「もう、相変わらず好青年だわぁ~」
騙せる、偽れる。
わたしは……僕は、水本 爽雨だ。