Rain shadow─偽りのレヴェル─
「おれもそれは同じです」
「え…?」
「おれも誰かに肌見せるの、好きじゃないです。…傷だらけだから、」
それは、喧嘩だけの傷ではないこと。
広がってしまった沈黙に、せっかくの楽しい雰囲気を壊してしまったと思ったらしい瀧は、はっとして小さく謝ってくる。
「えっと、おれも同じだから大丈夫ですって…伝えたくて、」
「……ふっ、あははっ!瀧ほんとかわいい!」
「わっ…!」
少しだけ言葉っ足らずで、そこまで誰かと親睦を深めたことがない不慣れさもあって。
けれど、すごくやさしい子。
「瀧、その傷は…いつか瀧をもっと強くしてくれるものになるよ」
「…爽雨さん、」
「だから不安に思うことなんか、なんにもない」
前に瀧は、首にある傷を気持ち悪くてグロいって自分で言ってたけど。
そんなことない。
瀧が幼い頃から必死に生きてきた証だ。
「それに、お姉さんから貰ったお守りもあるだろ?」
「…はい、」
マフラーに唇を埋めた瀧の反応は、喜んでくれていること。
優しくて爽やかな風がサァァァと吹くと、もしかするとそれはお兄ちゃんと翠加さんなんじゃないかなって思えた。