Rain shadow─偽りのレヴェル─




「じゃあいつか…爽雨さんだけには見せたとき、引かないでくれますか…?」



おそるおそる聞いてくる。

そんな不安な顔しなくてもいいのに…と、言葉にしなくても伝わるくらいの微笑みを返した。



「当たり前だよ、引くわけない。たぶんそのときは僕も嬉しいなって、ありがとうって思うだろうから」



わたしだけに見せてくれる。

彼がお兄ちゃんにだけは心を開いてくれている何よりの証拠。


………ん?

でもそれって結局はわたしが見ることになるから、わたしが瀧の身体を見る約束になってない……?



「…ありがとうございます」


「う、うん」



それって、よくよく考えたらどういう状況なんだろう…。

想像するだけ分からなくなるけど、きっとずっとずっと先だろうから考えないようにしよう。



「なに、おまえら揃って待機組?」


「……!!」



と、わたしたちの前に影ができた。

かき氷をひとつ手にしてスプーンを咥えるだけで絵画だ。



「……かき氷…溶けてるよ、綾都」


「3回くらい女に捕まったんだよ。最悪だ」


「…そうなんだ」



そっけなく返事をするわたしを鼻で笑ってから、隣に腰を落としてきた。

久遠くん、わたし、瀧の並び順。



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