Rain shadow─偽りのレヴェル─
「うん、わかった!」
「おい、」
パクっと、久遠くんが瀧にあげようとしていたかき氷を強引にもひとくち。
「綾都、僕たちは男同士だろ。なにが駄目なんだ」
「……だめだろ、」
ぼそっとつぶやかれた声は、たぶんわたしにしか聞こえていない。
そんなものにトクンと胸が跳ねた。
「はいっ、どーぞ瀧!」
「…ありがとうございます、」
わたしはお兄ちゃんともしょっちゅうこういうことはしていたから、別に気になるタチではなくて。
だからといって誰とでもするのかってなると、また話は変わってくるけれど。
でも瀧は弟みたいなものだから。
瀧にとってもわたしは翠加さんに似ている、ちょっと女みたいな男ってところだろうし。
「どう?もうほとんど溶けてるけど、」
「…美味しいです」
「ふふっ、舌がピンクになるかな?」
ほんのりと顔を赤くさせている気がしたのは、きっとマフラーをしていて暑いからだ。
そしてさっきよりも距離が詰められているのも……気のせいだ。