Rain shadow─偽りのレヴェル─
「…ここはフェスかよ」
「あっ、ふたりともおかえりー。いやー、逆ナンされた人数を赤矢と対決しててさ。気づいたらこんなにたくさん」
ビーチテント付近が女の子たちで群がっていると思ったら。
飲み物や食べ物片手にきゃあきゃあ騒いでいる、水着姿の若い子たちに囲まれていた。
「きゃーーっ!!さっきのイケメンくんだぁ~~!!」
「なまえ教えてくださぁ~いっ!!」
「どうしようこんなの迷っちゃうーーー!!」
そして案の定、すさまじい人気度で。
さっきまでわたしとキスしてたのに……なんて思ってしまって、ぶんぶんと首を大袈裟にも振った。
「あたしこの子タイプ~!中性的な顔立ちすっごく好きなの!」
「…あ、どうも、です」
「かわいーーっ!!」
……お兄ちゃんも人気みたいで。
これは深雨ではなく、爽雨が人気ということ。
「あれ…?瀧と霊池先輩は…?」
「仁くんなら飲み物買いに行ってて、瀧ならそっち」
佐狐が指をさした先。
波打ち際に立つ、紺色のサーフパンツにラッシュガード、マフラーを合わせた背中を発見。
近づく女の子たちはみんな肩を落として去っていくから、瀧はそのままでいてほしいと切実に思った。