Rain shadow─偽りのレヴェル─




「っ……、ぅぅ……っ、ひっく…っ、」



今だってほら、こうして泣くことしかできないなんて。



「────…また…守れないのかおれは……、約束……したんだ、…泣かせないって、おれが守るって、」



ぼそっと、ひとりがつぶやいた。



「……もういい、ぜんぶ終わりだ、」


「っ、瀧……!!」



その子は誰も反応できないスピードでわたしたちの元へ向かってくる。

こぶしを握って、マフラーがたとえ海風に取れてしまったって、そんなのお構い無しに向かってくる。


首元、ほんとうに火傷のように付けられた鱗模様があった。


彼がずっとずっと隠していた痕。

それはわたしの目にはすごく格好いい刻印のように見えた。


今にも泣きそうな顔で向かってくる瀧は、たとえ鬼木に殺されてもそれはそれでいいと思っているんだろう。


大好きな姉の元に行けるなら、もうそれはそれで───と。



「─────退け、俺が殺る」


「っ……!!」



瀧が追いつくよりも先にわたしの前に現れた人物。

その声だけで囲っていた男たちに威圧を与えてしまう。


瀧の身体をバネにするみたく、気づいたときには目の前に瞳孔を開いた久遠 綾都が飛びかかるように現れていて。



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