Rain shadow─偽りのレヴェル─
今日は翠加も他のメンバーもいないこともあり、ずいぶんと静かなアジトだった。
けれど久しぶりの2人の時間はお互いに心地いいものでもあって。
『いい名前じゃん。爽雨と深雨ね、覚えやすい』
『…俺もいい名前だと思うよ、お前の名前』
『そーか?』
『───アヤハ。』
それはぜったい俺たち以外の人間がいるときは言うなよ、と言い聞かせていた。
この秘密を知っているふたりのうちのひとりが爽雨だ。
『綾都も格好いいけど、俺は綾羽のほうが好きだ』
『……深雨にそれ言われたら嬉しいんだけどな』
『はははっ。おまえ本気で惚れたのかよ。うそだろ』
───久遠 綾羽。
それが俺が生まれたときに名付けられた本当の名前。
けれど俺は理由あって久遠 綾都という偽りの名前で生きていた。
それを知っている人間は、爽雨と翠加だけ。
たとえRain shadowの幹部だとしても、そいつら以外には教えてもいない。
『…俺、ぜったい負けないから綾羽』
そして人の気持ちを勝手に決めつけてくるのも爽雨の特徴だった。
そこは良くも悪くもあって、勘違いされたまま今も話がトントンと進んでいる気がする。