Rain shadow─偽りのレヴェル─
それにしてもこの梅雨の季節でもマフラーを巻いてるなんて、暑くないのかな…。
鱗(うろこ)模様をしたマフラー。
その人は無気力そうな視線を移してくれる。
「2年C組って…、どこにありますか…?」
「……」
返事がない、ただの屍のようだ。
「……だれですか?」
「えっ、」
ぼーっと見つめてくるくせ、よく見るとどこか蛇のような鋭い目をしていた。
誰って…、もしかしてお兄ちゃんのことを知らないひと…?
「…おれに敬語なんか使わないでしょ、爽雨さん」
「へっ、あっ、そうだった…!ごめん、僕ちょっと今日体調が良くなくて…!」
「……ぼく、」
ぼそっと落とされたタイミング、遠くから「瀧(たき)さーん!!」と駆け寄ってくるひとり。
たき……、
瀧ってもしかして、お兄ちゃんの日記に書いてあった蛇島 瀧(へびじま たき)のこと…?
「ごめん瀧、2年の階ってそっちであってる?」
ここは先輩らしく、自然な流れで言ってみる。
「…あってますよ」
「ありがとう」