Rain shadow─偽りのレヴェル─
「最近これなくてごめん。ちょっとまたRain shadowが誰かさんのおかげで忙しくなったんだ」
誰かさんのおかげでな───。
皮肉のような嫌味のような、けれどその気などまったくない言い方で2回は言ってやった。
一定音を出しつづける心電図、たくさんの生命維持装置がひとつのベッドを囲うように設置されている。
そしてそこに眠る存在は、今日も目を閉じつづけたまま。
「笑えるよ、ほんと。まさか反乱がまじで収まるなんてさ、」
会いに来たときは必ずベッド脇に座って、こうして独り言のような会話でぽつりぽつりと話しかける日々だった。
「赤矢も遼成も、前みたいに戻ってきてんの。アジトは相変わらずゲームとお菓子だらけで、うるさくて賑やかで、」
意識不明の重体。
そんな状態でこの病院に運ばれてきて、未だに意識は途切れたまま。
しかし心臓の動きはしっかりとある。
半分植物状態だと医者は言っていたが、それでもこいつは生きてるんだ。
「…お前の妹は、がんばってるよ」
この姿を知っているのは俺だけだ。
眠りつづける男が生きていることを知っているのは、俺だけ。