Rain shadow─偽りのレヴェル─
「鬼神の規模だったり周りとの関わり、それからあいつらは特殊なクスリを使ってくるからさ」
「クスリ……?」
「かつてViperの総長だった男なんだ、鬼木は。いまの瀧が仕切るViperはそんなの使ってないけど、
鬼木は危ないクスリを平気で揃えてるような奴なんだよ」
いま、机の下で震えるその手を握ることが許されるのなら。
迷わず握って、「大丈夫です」と伝えて。
必ずおれが守ります、あなたはおれが守りますって。
かつての爽雨さんが姉さんに抱いていた、もどかしくて歯がゆい想いが初めて分かったような気がした。
「ごめんみんな…、僕が勝手なことしたから…。だけど、必ず鬼木は僕の手で決着をつける。
みんなの手だけはぜったい汚させないから」
そんな顔をしないでください、“深雨”さん。
そんなに悲しい顔をしないで。
つらそうな顔をしないで、苦しそうな顔をしないで。
おれは、おれはあなたの味方だ。
おれだけはずっと、あなた達の味方なんだ。
「…それでも僕には…、ここがすべてだから」
やっぱりだ。
彼女は、深雨さんは、兄である爽雨さんの仇を討つために朱雀に来たんだと。
でもね深雨さん、敵は1人とは限らないんです。