Rain shadow─偽りのレヴェル─
「…なーに言ってんの。鬼木と決着をつけるのは俺たちRain shadowの宿命みたいなものだよ。それに、参謀の命令に従わないわけないでしょ」
「せや、逆にあれぐらい言ってもらわんとオレたちはいつまで経っても覚悟が決まらんかったわ」
「だから俺たちはそんな参謀がいて、誇りに思ってるんだ」
そこにはおれも頷いておいた。
けれど霧の晴れない彼女の微笑みを見ると、やっぱり手を握りたいと思ってしまう。
「あっ、そういやオレも気になることあるんやった」
もう少し浸っていたかった空気を変えたのは、銀髪キツネではなく赤髪カラスのほうだった。
「なぁ、アレ誰なん?アヤハ?っての」
「俺も気になっていた」
「やっぱ仁もなんや!綾都の知り合いなん?名前そっくりやん」
その名前を聞いていちばん最初に顔を強ばらせたのは深雨さんだった。
次に佐狐先輩が怪しげな笑みを落としながら、流し目におれを見る。
「爽雨!おまえも知ってるんやろ?鬼木はお前に言っとったし」
「……」
言葉に詰まっているようだった。
それでもじわじわと威圧を出す殺気のようなもの。
おれは肩をくっつけるように、先ほどよりもまた椅子を寄せた。