Rain shadow─偽りのレヴェル─
「ーー…ーき、……ーーか?───おい瀧!!おまえ寝てんちゃうか!?」
「っ……!……、ぼーっとしてました、」
そうだ、お昼……。
気づけば昼休み終了まで10分を切っていて。
けれどこんな不良高校で真面目に時間を守るほうが珍しい。
「オレが食ってええ?それぜったい新発売やろ?」
すでに霊池先輩はいなくなっていて、佐狐先輩はどこかの女と電話でもしているんだろう。
耳に当てたスマートフォンからは女の甘ったるい声が微かに聞こえてきた。
おれが手にするコンビニで買ったチキンサンドは小さな齧り跡があるだけで、見方によっては口をつけていないようにも見える。
「……だめです、」
「んならひとくち!」
「間接キスなんか嫌すぎます」
「嫌すぎってなんやねん!男同士なんやから気にすんなや!」
「…おれは好きな人とじゃなきゃ無理なんで」
烏間先輩とのやり取りを見つめていた彼女は、お弁当箱を丁寧にしまいながら軽く笑っているから、伝わっていないみたいだ。
本当の爽雨さんなら、それだって2段構造になっていて。
小柄なわりには結構たべるところがあって、それでもよく足りないと言っていたくらいだった。