Rain shadow─偽りのレヴェル─
けれどおれが今まで生きてきた中でいちばん心に残ったものは、映画やドラマなんて比にならないものだった。
『…おまえがすきだ。────……誰よりも…心から愛してるよ、…翠加、』
あれ以上のものはこの世に存在しないと思う。
もしおれが、彼がしたように誰かと交わすときがくるのなら。
おれはこの人がいいと、ふと考えてしまうときがあった。
「あっ、てかチャイム!瀧それ教室持っていって食べて!」
ほら、爽雨さんはそこまで時間に忠実でもなかった。
根は真面目だったからわざと不規則に過ごそうとしていたくらいで、不良に溶け込めない中でも溶け込もうとしていて。
ガタッと立ち上がって、机に置かれていたおれのペットボトルをビニール袋に戻してまとめてくれる深雨さん。
「赤矢!これお前のゴミ!佐狐、ゴミ!」
「いや言い方。それ俺を貶してる?爽雨くん」
この人まで失ったら、おれはたぶん生きれない。
生きようとも思えなくて、この世界に生きる意味が見つからなくなって。
そっちの世界のほうが幸せだって確信ができてしまうんだろう。
「っ…、」
「───わっ…!」
そんなことを思ったら、勢いよく立ち上がって深雨さんを抱き寄せていた。