Rain shadow─偽りのレヴェル─




「たき……?え、どうした…?」


「うっそーー。やっぱり?え、ふたりってそーいう関係なの?写真撮っていい?」


「おまえら何してんねん…!!食後に気色わりぃもん見せんなやボケ!!」



狙われるかもしれない。

いまは水本 爽雨だとしても、もし深雨さんということが周りにバレてしまったら。


姉さんみたいに拐われて、あんな姿にされて、そこでおれは爽雨さんのように悲しい告白をして。

返事すら返ってこない愛しい人を抱きしめて、唇を合わせて、あんな、あんな悲しくてたまらない思いをする。


そんなものを彼女で想像したら、耐えられないほど怖くなった。



「……おれが、ぜったいあなたを守ります、」



守れるだろうかと不安が過った。

また約束を守れないんじゃないかって、怖くなった。



「もうぜったい泣かせません、…あんな涙は流させない、」



おれは約束なんかひとつも叶えてこれなかった男だけど、この人だけは自分の命よりも大切だから。


彼女の中には爽雨さんが入っていて、姉さんも入っている。

おれが守りたいものぜんぶが、この人そのものなんだ。



「もう十分まもられてる。…だからもう、泣かないでいいよ瀧」


「……!」



泣いてない、おれは泣いてない。

それなのに背中を撫でてくれる手は、泣いている子をあやすものに似ていた。


それが姉さんと爽雨さんのものに、よく似ていた───。



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